たった一つのお願い



しかし、病室から出るとその動悸はおさまっていた。


何だか今日は疲れたな…




「あら?三神先生じゃありませんか。この階にいらっしゃるなんて珍しいですね」



「えぇ…まぁ」




誰だ。この看護師。
全然知らないぞ。
よその科の奴まで生憎俺は知らない。
宮ちゃんぐらいだ。




「ご用事ですか?」



「いや…もう済んだので。では」




余計な誘いを受ける前に戻ろう。


まさか昼休みに俺に話しかけてくる看護師と遭遇してしまうとはな。
もう少し上手い言い訳を考えなければならない。


というより何故俺は春陽ちゃんに会いに行くことを隠す?


…まぁ、一人の患者を贔屓するのはよくないからな。


では、良くないと分かっていながら会いに行くのは何故だ?



それは――――…