私は龍が何て答えるのだろうかとドキドキしていた。
何故かは分からない。だけど、やたらと緊張したのは覚えている。
そうして、龍がお父さんに言った言葉はこうだった。
「…違います。道でたまたま通りかかって…俺はただの同級生です…」
別に、私だって何度もウソをついてきた。
現に体調の事だって黙ってた。
龍を責める権限なんて私にはない。
四六時中一緒に居たいとか、支えてほしいとか思った事は1度もない。だから頼んだ事もない。
ただ、私は私と居た時間を否定されたのが悲しかった。
だから龍が失礼しますと病室を出て行った後、お父さんがカーテンを開けても私は寝たふりを続けた。
何かを話してしまったら、何かが壊れてしまいそうな気がしたから。
「…ごめんな、春陽」
寝ていると思っているのだろう。お父さんの声は弱弱しく震えていた。私の前でお父さんは絶対に泣かない人だからだ。
お母さんの葬儀の時も1人静かに黙って泣いていたのを私は知っている。でもそれは、私がたまたま深夜に目が覚めてその現場を目撃したからだ。決して私の目の前で流したものではない。


