たった一つのお願い



春陽は俯き、俺の胸に顔をうずめる。小さく息を零しながらゆっくりと語り始めた。





「…だって、理央は私のせいで我慢ばかりしてるでしょ?」



「春…」



「私が病気持ちなばっかりに、気を遣って私を考慮して旅行して…身体の関係にも…なれなくて…我慢ばっかり…」





だから春陽はあんな事を言ったのか。





『ーー私、理央とならやってもかまわないよ』




「しかも、昨日あまり眠れなかったんでしょ?隈、出来てる」





…春陽は、とても敏感だ。だから人の気持ちを考えて自分の事は後回しする。

今だってそうだ。俺の事ばかり気にして気にして…コレは春陽と俺の旅行だというのに、彼女は俺が楽しいかどうかばかりを考え気にしている。


でもコレが彼女の性格なんだ。今更どうこう言う気はない。



だけど。






「―――俺は春陽にそんな顔はさせたくない」




そんな顔を見るためにここへ来たんじゃない。俺は彼女の顔をゆっくりと持ち上げ目を合わせる。こうでもしないと彼女の顔をいつまでたっても真っ直ぐ見つめる事が出来ないからだ。