たった一つのお願い



それからというもの、春陽は一切俺と目を合わせなくなってしまった。

質問すれば、答えは返ってくるし、相槌も打ってくれる。
ただ、目が合わない。

これはこれで結構きつい。


照れや恥でこうしてくれるなら分かる。むしろ嬉しい。
だが春陽は必ず目を見て話してくれるタイプの女性だ。勿論、泣いている時等の例外はある。
しかし今回は例外ではない。普段の会話で目が合わない。大問題だ。




「なぁ、春陽」




「………」




やはりこちらを真っ直ぐ見ない。





「…昨日、俺は何か春陽に対して失礼な事をしたか?」





すると春陽はフルフルと首を振る。




「じゃあ、春陽は何故そんな顔をしてるんだ?
教えてくれないか?…俺は阿呆だから、何も分からないんだ」






大切な彼女の心情さえも、分からないんだ。