たった一つのお願い



結局、春陽は父親にお土産としてここの旅館特製のレモネードを買っていた。

よくそんな物が売っていたな、とか
温泉饅頭などの食べ物ではなく、飲料なのか、とか色々突っ込み所は多くあるかもしれないが、会計を済ませた春陽の笑顔を見たら吹き飛んだ。

大事なのは春陽の笑顔で、この世にこれ以上の価値あるものは存在しない。
俺が支払うと言ったら、春陽は頑なに拒否し、ムスッとされてしまった。

だから情けなくも、彼女にお土産一つも買わず、さらにお金を出させるという頼りない無能な彼氏になってしまった。

春陽に何もプレゼントしないのに父親に買うのもハッキリ言って嫌だったので俺は財布を開ける事なく売店を出た。


俺は一体、何をやっているんだ…?


俺は、自身に呆れ、また一つ深い溜め息を吐いた。