たった一つのお願い



夕食までまだ少し時間があるので、部屋へ戻る前に売店へ俺たちは立ち寄った。




「お父さんは何が良いかなー」




......だからどうしてこうも欲が無いんだ。
まずは旅の思い出として自分の物を見るものじゃないのか?

まぁ、こんなひっそりとした旅館の売店だから、欲しい物がないと言うなら分かる。
けれど彼女の様子を見ている限りそんな様子は一切無い。
ただ本当に欲がないだけだ。見ていれば分かる。

実際彼女は温泉饅頭など、お土産コーナーしか見ていないからだ。

可愛いマスコットのキャラだのがのっているハンカチやタオルなどには一切見向きもしない。

何かプレゼントの一つでもこっそりと買えば良いのだろうが、そんな事をして彼女の笑顔が拝めるのかと考えたら残念な事に全く想像出来ない。


俺は溜め息を吐きながら、無邪気に微笑む彼女の姿をただただ見守るしかしなかった。