たった一つのお願い



「帰りに見ようか」



「あ...うん...」




俺の時でさえそんなに名残惜しそうにしたことはないのに。

じっと売店の饅頭を見つめているなんて...もしや俺は饅頭以外のポジションなのか?

いや、そんな事はないはずだ。
そもそも人と饅頭は比べる対象同士ではない。比べる時点で間違っている。


しかし...春陽は俺にこんな顔を向けた事がない。

詰まるところ俺は、春陽のどんな表情も見たいのだ。


怒った顔も、照れた顔も、焦った顔も、涙した顔も、全部。
そうじゃないと気が済まない、みたいだ。



あぁ、今日の俺は一段と重症だ。終わってる。
俺は夜、耐えれるのだろうか?




「あ、また理央何か考え込んでる」



「だから春陽が可愛いからだと言っただろう?」



「またそうやってっ...聞き飽きた!」




この顔は俺だけに見せる顔だから、特にお気に入りだ。
そっぽを向かれても、何故かついつい心嬉しく思ってしまう。




「俺は言い足りない」




ほら、またさらに赤くなった。
笑いが止まらない。そんな俺を見てこれ以上ないくらい頬を赤らめる彼女にさらに可笑しくなる。
春陽を見ていると切りがないんだ。