たった一つのお願い



夕食までにはまだ少し時間がある。



「春陽、温泉入りに行こうか」




俺が呼びかけると、春陽はニコリと笑って大きく頷いた。




「わーい、浴衣デビュー」




館内に備わっていた浴衣を抱きしめもうスリッパを履いて外へ出て行ってしまった。
とても寝起きだとは思えない元気さだ。


...まぁ、春陽が笑って元気でさえいてくれれば満足だから置いて行かれるぐらいが調度良いか。

俺は一人クスリと笑い、部屋の鍵を持って春陽の後を追いかけた。




「理央、売店あるよ。お父さんに何か買っていこうかな...」




温泉は1階の売店前を通らなければ辿り着けない。
彼女はごくありふれた温泉饅頭に目を奪われていた。

そして試食品で味を確かめている彼女がなんというか...




「おいしー...
病院のデザートの数倍おいしー!」




無防備過ぎる。
俺の中で色々な衝動にかられるが、なんとか堪え口を開く。