たった一つのお願い







そうして時間は流れ、春陽の退院も無事終わり、晴れて旅行の日となった。
天気は快晴。旅行日和である。




「わーこんなに遠出したの初めてだからドキドキするなー」




春陽のテンションがいつもより高い。それだけで俺の心は嬉しくなる。





「あまり最初からはしゃぐと疲れるぞ」



「分かってるー」




そうしてこの青空のように澄んだ笑みを俺に向ける。
微笑まれただけで何も言えなくなってしまう俺は本当に弱い。いつもの弁はどうしたというのか。







電車に乗り、タクシーへ乗り継いで旅館へ到着すると、さすがに春陽は疲れたようでグッタリしていた。
俺は館内の女将さんに頼んで先に布団の手配をしてもらった。

春陽を布団に寝かせると、眠りについた彼女の頭をそっと撫でる。
彼女に悪いとは思いながらも少し深く、けれど息苦しくない程度にキスをした。


彼女に触れている手が、温かく気持ちよかった。



気づけば俺も春陽の傍でいつの間にか眠ってしまっていた。


俺と春陽が目が覚めたのは夕日が沈みかけた頃だった。