たった一つのお願い



「いやー理央君荒れてるねー
と言うより拗ねてるね?」



「………」




春陽に相手をされず、モヤモヤがたまっていたその日の夜。
俺は久しぶりに祐司と飲みに来ていた。


俺は祐司のからかいに取り合うのが嫌でもくもくと酒を進める。


そもそもこういう結果が見えていたから本当は一人で飲むつもりだったんだ。
それをコイツは何のタイミングの悪さか俺が飲んでいる最中に電話をかけてきて、それなら俺もとここへ来たという次第だ。はっきり言って迷惑で鬱陶しい。




「春ちゃんから最近理央が機嫌悪いって聞いてるぞ?
本当に春ちゃんの事になると理央は心が狭いよなー」




「………」




何も言い返せない自分に余計腹が立つ。
しかもコイツに指摘されるのも腹が立つ。

今は何もかもに苛立ちが募る。




「どうせもうすぐで春ちゃんと旅行に行くんだろ?今ぐらい我慢しろよ」




「……分かっている」




俺はまた酒を呷る。


言われなくとも分かっている。
分かっている事を指摘されるのも腹が立つ。

この苛立ちを抑えるために飲まずにはいられなかった。




「あーあ…全然分かってないな…」




こんな祐司の言葉は俺の耳には全く入らなかった。