たった一つのお願い



そうこうしていると、祐司がやって来た。
手術開始まであと30分となった頃だった。…別に来なくて良いものを。




「おぉー春ちゃん。今日は嬉しそうだね。理央に沢山愛してもらったの?」




絡みがそこらのナンパ男みたいだ。しかも最弱の部類。




「!!」




だが、春陽はそんな祐司のからかいにも素直に反応する。…反則だ。
そんなのを見せるから俺がまた我慢しなければならないんだ。




「あらら。俺の言った事図星だったか。…ま、良好ならそれに越したことはないし」




…あぁ、また後で俺は祐司にしつこく質問をされ、からかわれるに違いない。
奴は俺を見てニヤリと笑っている。




だけどそれは、幸せな事なのだと今なら分かる。



春陽が居るからこんなにも俺は馬鹿になれるのだ。
コレは彼女の命がまだここにあるという証なんだと今ならそう思う。