たった一つのお願い



「……俺は、どうやら分かっているふりをしていただけみたいだ…」




声に出すのは嫌で仕方なくて、震えた。
こんな姿祐司には見せたくないのに…




「――俺は、春陽がこの世界から消えてしまった未来が恐い…」




だからずっと俺は今しか考えなかった。
今だけを見ていた。


それは春陽の事を想ってではなく、ただ自分が臆病で恐かったから。


俺は無意識に遠ざけて蓋をしていた。



春陽に溺れて俺はどんどん欲深くなる。

どんどん臆病になる。

どんどん情けなくなる。



今までにたくさんのそういう人達と接し、診てきたはずなのに。


春陽だけは違っていた。

春陽だけは特別なんだ。



「俺は情けなくも今気づいた」




春陽のお父さんに教えられた。


認めたくなくて、声を荒げて反対した。
だけど、彼の言い分は全て正しかった。


だから俺は。




「今の俺はひどく惨めだ…」




こんな姿を晒してしまっている。