たった一つのお願い



その晩。
俺は祐司を酒代俺持ちで呼び出した。


勿論奴はまたいつもより高い店を選ぶ。
だが今日は俺が言った事なので文句は言えない。




「で、用件は?」




酒を頼むなり奴は聞いてきた。
まぁ、酒が入る前に済ませたい話題でもあるのでいきなり主題に入ってくれるのは好都合だ。




「コレに名前を書いて欲しい」




俺は鞄から婚姻届を差し出す。




「なっ……お前コレ…」



「分かっている」




祐司が言いたい事は分かる。
この俺がいきなりここまでするのも可笑しいのだろう。


世間ではまだまだ付き合ったばかり。
付き合っている期間は数ヶ月にも満たない。



だが。




「春陽が望んでくれるなら、俺は春陽と家族になりたい」




こんな想いは初めてなんだ。