たった一つのお願い



今まで付き合う事でさえ鬱陶しく考えていた。


理想の女性を掲げるだけで興味はなかった。



勿論親から何度もそろそろ年だと言われてはいたが、聞き流していた。


送られてきたお見合い写真はすぐさまゴミ箱へ捨てていた。



だから、俺が結婚したいだなんて夢のまた夢で。



自分でも終わっていると自覚するぐらい大切な春陽に対してそんな願望をいつの間にか見落としていた。



付き合っているだけで浮かれ。


周りからは変わったと教えられ。


祐司からは茶化されてばかり。




――本当に春陽と居るだけで俺は馬鹿になってしまう。
もう、どうしようもない奴。




「――式は分からないが、報告はする」




そう言ってまだ話そうとするおふくろを無視して俺は電話を切った。