注文の出来ない喫茶店【短編】

「おっさんさ、貸して」



ほらみた事か
早速、金の催促か



「悪いが貸せん。君に貸すような金はびた一文ないんだ。悪いがとっとと帰ってくれないか」



私は極力、威厳のある声を意識的に出した
力では確実に負けるのはわかっている
ただ、少しでも怯む姿だけは晒したくなかった



「はあ?
おっさん、何か勘違いしてね?
俺はさ、キッチン貸して欲しいんだよ
中、入るよ」



そう言うと、若者は床に堀投げたままのリュックからごそごそと何かを取り出すと
一番端のカウンターテーブルを押し上げ、遠慮の欠片もなく中へと入ってきた



そして、



私用に置いてある
普段使いのカップを2つ棚から取り出し
手に持っていた瓶の蓋を開けると
作り出した



インスタント珈琲を…