「………ごめんね、麗菓さん」

彼女は口付けを終えると小さく呟いて立ち上がります。立ち上がったその背中は思っていたよりも小さくて、気付けばわたしは




「…待って、麗…亜……」




無意識に彼女の、かつて孤児だった少女の名前を呼んでいました。

「……思い出したんだね。………けど、それは偽りの記憶だから…」

昔と変わらない声音で告げる姿は、昔よりもずっと大人びていて、まるでわたしだけが成長していないかのような錯覚に陥ります。

麗亜は躊躇うように瞳を揺らすとやがて覚悟したように、一歩また一歩と近付いて来ました。

「ほんとだったら、もう少し先の未来でボクらは出会うはずだったんだ。…だから、今日の記憶はその日まで……」

最後の方は涙を堪えるような声音で言うと、再び優しい口付けを落とします。その柔らく甘い唇にわたしは、全ての意識を委ねました。



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