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最初はこの暗い空間にひとりだったのにいつの間にか人が増えて賑やかになりました。

「それでね、麗奈ったら面白いんですよ!」

「い、言わないでよ麗菓さん!!」

わたしの向かいに座るふたりの少女は銭湯に行った話で盛り上がっています。なんでも、ボディシャンプーを頭に付けようとしたり、湯槽にタオルを入れたりと大変だったんだとか。

そんなふたりの会話が面白くて、思わずわたしも声を出して笑ってしまいました。

「もうっ、花耶さんまで笑わなくたっていいじゃん!!」

不粋そうに言う少女(麗奈さん、ですよね?)は拗ねた様子で頬を膨らますと急に真面目な顔になります。

わたしはついに聞かれるものが来たと思い麗奈さん達には気付かれないよう身構えました。

「…ところでさ、正直な話麗菓さんや花耶さんは何処まで知ってるの?ボクと奈央……ルイが『if』世界とこっちの世界で抹消されたうちの片方だって言うのは知ってる?」

「わたしが知ってるのは、奈央さんが女衒で杏さんが女将、貴女の存在していない、『if』世界のことです」

そう、わたしは何も知らないままに眠ってしまい気付いたら此処にいたのですが……

「さっきのルイさん……じゃなくて奈央さんの話を聞く限り、花耶さんは『if』世界のわたしなんですね」

わたしの考えていたことをそのまま言葉にする麗菓さん。最初に感じたものの正体は、『if』世界の自分に対する不快感だったのでしょうか。