おかあさんの目が暗闇に慣れるまで待つと、ボク達はふたり並んで薄明かりのところへと向かいました。

暗闇の中に聞こえるのは、自分とおかあさんの足音だけで、本当に近くにおかあさんがいるのかと不安になったボクはおかあさんの手を握ります。

「甘えん坊ね…ほら、もっとこっちにおいで?」

控えめに繋いでいた手を深く絡めて、ボク達は並んで歩きます。すると突然おかあさんは立ち止まり、

「…抱っこ、してあげようか?」

今まで何度も夢に視たことを言われ、反射的に頷くボクを愛しそうに撫でるおかあさん。そのままおかあさんに抱かれ、まるで幼子のように胸に顔を埋めました。

「……本当はずっと、こうして麗亜を抱き締めて、頭を撫でて、…友達みたいな親子になりたかったのよ…」

囁く声は寂しげで、ボクが普通に生まれていたならおかあさんが悲しむ必要はなかったのではないかと思います。

「…おかあさん、おかあさん…」

ただ、その思いを伝えたら今のこの時が壊れてしまう気がしてボクはおかあさんを呼び続けました。


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