「それ」は、まるで闇の塊でした。
真っ黒い、夜よりも暗い黒色のコートを着た「それ」は、わたしと麗奈とを交互に見比べ。
「…なるほど、ショートの仔猫ちゃんは孤児(ロンリーガール)か」
納得したように頷き、更に数歩踏み出し、
「で、………左の仔猫ちゃんが家出少女(アウェイガール)、と…。 …うん、中々面白い組み合わせだね」
目元を厭らしく歪ませ、闇のコートの人物は此方を眺めています。
「…ねぇ、キミ誰?……ボク、此処に住んでる人じゃないとわからないんだよね」
わたしの服の袖を強く握ったまま、麗奈は問いました。
「わからない?ははっ、ロンリーちゃんは不思議なこと言うねぇ…♪」
コートの人物は口元を歪ませたまま麗奈の問い掛けに答えます。
「まぁ、わからなくても仕方ないよね。……だって、ボクは俺なんだから…」
よくわからないことを言い、その人物は私を見ました。
「…俺としては、そっちのアウェイちゃんの方が気になるんだけどね?」
わたしは、なんとも形容し難い不快感に襲われコートの人物から目を背けました。

