花耶、奈央、あたしの3人で食事をしていると不意に花耶が眠たそうな顔になった。
「…ごめんなさい、眠っていいですか…?」
あたしは頷き寝室へと案内した。
「…あ、杏さん…、……ありがとうございます」
鈴の鳴るように言うと純粋な笑みを浮かべる花耶。その瞳は窓から射す陽の光を浴びて不思議に光っている。
「別に、お礼を言われるようなことは何もしていないわ。…あたしは遊郭の女将であんたは遊女、ただそれだけのことよ」
おやすみなさい、素っ気なく言うと奈央の待つ客室へ向かう。歩いただけで不気味に音を立てる廊下は花耶と奈央の今後を暗示しているようで、あたしは不安を感じずにはいられなかった。

