屋敷の中は糸を張ったように張り詰めていて、来た者を威圧しているようだった。

何かが気になるのか花耶はさっきから落ち着きなく辺りを見回し溜め息を吐くのを繰り返している。

「…花耶ちゃん、大丈夫かい?」

同じことを考えていたのだろう、奈央は尋ねるとそっと頭を撫でる。突然撫でられたことに花耶は少し困惑した表情を浮かべ、恥ずかしそうに笑った。

「いえ…ただ、ちょっと怖い感じのお屋敷だな…って」

少しおどおどした口調で告げる花耶を、あたしも軽く撫でる。艶やかな黒髪は触り心地が良く、その瞳の色と相まって不思議な印象を与えていた。

「まぁ、いつまでも此処にいたって意味ないわ。早く部屋に行きましょう」

ふたりを促し、客室として利用されていた部屋へ向かった。