奥に行くと、麗奈とルイさんが向かい合って座っていました。

「た、ただいま…戻りました…」

何やら難しい顔をしているルイさんに、それを見詰める麗奈。そして、そんなふたりに付き従うように脇に座るふたつの影法師…。

「…もう、お別れなんだって」

聞き取れるか取れないかの声で言われ、微かに返事をするのが精一杯でした。

「……麗菓さん、もし離れ離れになっても、また会えるよね?」

悲し気な声で言う麗奈は、やっぱり弱々しくていざ離れ離れになると思うと、名残惜しい気持ちになります。

「勿論ですよ、麗奈。……例え離れても、絶対に会いに行くから…」

わたしは泣きそうになるのを堪え、優しく微笑みました。そうすると、ルイさんは切ない、油断したら同情をしてしまいそうなくらい悲しそうな顔で私達を見ます。

「…もう、お別れは済んだかな?」

非情な程に冷たい、この世の全てをも凍らせかねない声は、ルイさんの側から響いたものです。

「正直言うと、あまり時間がないんだよ。だから、お別れが済んだのなら早く表に出て欲しい」

その男性は優しく、けれど頑として譲らない口調で、わたし達を引き裂こうとします。わたしはもう一度麗奈を見ると、麗奈は今にも泣き出しそうなほどに瞳を潤ませていました。

ふたりの座る座卓にカップを置き、慈しむように頭を撫でると麗奈は堪え切れなくなったのか、大声で泣き出します。涙は頬を伝い、床でぽとっと跳ねました。

わたしはそっと目尻に唇を寄せ、涙を吸い取りました。そして頬に口付けをすると、正面から麗奈を見詰め



「必ず、何ヵ月、何年、掛かるかわからないけど、でも、必ず行くから」



「……うん…。ボクも、どのぐらいの時間が掛かるかはわからないけど、絶対行く。」



わたしは明るく、麗奈は悲しみに濡れた瞳で言うと、どちらともなく互いの唇を重ね永遠とも思うような、刹那の口付けを交わしました。