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「おかえりなさい」

お店に戻ると、杏さんが迎えて下さいました。

「ただいま戻りました」

ふたり揃って礼をすると、何やらカップみたいなものを持って杏さんは佇んでいます。

「…外、寒かったでしょう」

スープと言われ、そっと受け取ります。すると白い湯気がほかほかと顔に当たりました。

「熱…っ」

麗奈は言うと、カップを落としそうになりました。

「じゃあわたしが持っててあげる」

カップを受け取ると、溢さないように店の奥へ向かいます。

「ありがとう麗菓さん」

はにかむような笑顔で言うと、先に奥へと向かう麗奈。

「…ごめんなさい…」

その後ろ姿を見詰めていたわたしは、囁くような声に隣を見ました。

すると声の主である杏さんが寂しげに此方を見詰めています。

「杏さん…?」

「貴女だって、本当は嫌なんでしょう?…ね、か…」

「麗菓さーん、杏さーん、早くーぅ!!」

お店の奥から麗奈の声が響き、わたしは溢さないように気を付けながら杏さんを見ます。

「杏さ…」

「やっぱりなんでもないわ、…早く行ってあげなさい。大事な子なんでしょう?」

大事な子、その言葉にわたしは強く頷きました。