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「じゃあ、行こうか?」

その言葉を聞いた途端、ボクはいわれのない恐怖を感じました。

「…行くって、何処に?」

それは、ほとんど理性というよりは本能でした。

ボクは考えるより早く言葉を吐き、すぐ逃げられるように身構えました。

「…麗奈?」

ボクの異変に気付いた麗菓さんは、既にボク達の目の前に現れた男に気付かれないように小さく囁きます。

「……麗菓さん、…あの男、なにか危ない臭いがする」

ボクの言葉の意味がわからないのか、麗菓さんは首を傾げ

「…危ない…って…」

麗菓さんは横目にコートの男を盗み見るとボクを真似て

「私には、危険なようには思いませんけど…」

「いいから。…あの男がなにか行動を起こしたらボクと一緒に逃げて」

納得のいかないような顔で麗菓さんは頷くと、再びコートの人物と話し始めました。

「…ってことで、最早君たちには選択の余地なんてないんだけど………」

コートの男はボク達が小声で話をしている間ずっとひとりで喋っていたらしく、麗菓さんが男の方を見た時にはその話も終わりに入っていました。