気付いたらこうだったんだ。 人の機嫌を取っていれば。明るくたち振 る舞って、適度な目立ち方をしていれば 。 生きていくことが、らくだった。 穏やかな流れに乗って、浮遊していれば 誰にも文句を言われず、慕われた。 騙してたんじゃ、ない。 だけど西山の声が。言葉が―――。 一生解けない呪文のように俺に付きまと った。 親父の転勤で引っ越してからも、ずっと 。 弱味を握られて、身動きすら、取れず。 ―――『国立光弥って居る?』