やがて聞こえてきたのは、焦ったような杏子ちゃんの声。
「え?」
『律希ちゃんと別れるなんて、嘘、ですよね……!』
「……っ、そこに、律希いるの?」
『居ます……すごい、泣いてて』
胸がぎゅ、と締め付けられる。
──ああ、どんな事が理由だったとしたって、あんな嘘つくんじゃなかった。
「……杏子ちゃん、それ、スピーカーにしとくことできる?」
『え、あっ、はい!』
ふう、と息をつく。
「律希……、聞こえてる?別れるって言ったのは、嘘だよ。今日、エイプリルフールだから……ごめん」
向こう側からは、声は聞こえてこない。
「最低な嘘ついたってわかってる。でも俺、願掛けしてたんだ。この日についた嘘は、一年間本当の事にならないって、ジンクスがあるから」


