そしてその翌日のHRで。

「木山君は今日も病欠だそうです」と担任は言った。

HRが終わった後、教室を出たところで担任を呼びとめた。

「木山君、2日連続で病欠って、何の病気なんですか」

私が言うと、担任は首を傾げながら「そこまでは聞いてないんだけどねぇ」と笑いながら言った。

「生徒のことが心配じゃないんですか?」

私が言うと、担任はきょとんとしたような表情を浮かべた。

「風野さん、今は春だから確かに珍しいかもしれないけれど。ほんの数ヶ月前まではインフルエンザで学級閉鎖の騒ぎが起こっていたじゃない。
何日か休むなんて普通のことだと思うし、お家の方からちゃんと連絡が入っているんだから、そんなに心配することもないと思うんだけどな」

あの日木山君の母親と対峙したというのにのんびりとそんなことを口にした担任に、不信感を抱かずにはいられなかった。


その足で保健室へと向かい、保健医さんに同じ質問をした。

「そのことなんだけど、1度誰かが様子を見に行った方が良いと思うんだよね。
例えば弟の淳君の保護者さんだとか、責任を持って確認が取れる人にお願いして……」

淳君の保護者という言葉の一昨日のめぐちゃんの言葉が脳裏をよぎる。

――あぁ、恭子さんか!!
ごく親しい知り合いのことを呼ぶかのようにまんざらでもなく言ってのけていた。



翌週の月曜日も木山君の下駄箱に靴がないことを確認すると、さすがに他のクラスメートたちも危機感を覚えた。

「5日も病欠って何の病気だよ。
まさか入院してるとか?」

中西君の言葉に猿渡さんが「縁起でもないこと言うなよ」と怒った。

「でもさすがにおかしくない?サボることはよくあったけど家から病欠って連絡あるとかちょっとねぇ。
他の理由があるんじゃないの」

クラスの話題は木山君のことでもちきりとなっていて、その間淳君はずっと机の下で誰かとメールをしていた。

昼休み。

「ねぇ淳、やっぱり何か心当たりがあるんだよね」

屋上で皆で集った中、めぐちゃんが問い詰めると淳君はようやく頷いた。

「木山君の目のこととか爪のこととか……あとあの神経症とか、全部淳は知ってるんだよね」

めぐちゃんの言葉にもう1度淳君は頷いた。

「知ってる」と。