新学期。

クラスの貼り出し表を見て、私とめぐちゃんは手を取り合ってとび跳ねた。

めぐちゃんはメールの通り、髪をバッサリと切ってメークもなし男物の制服を着てきていた。

身長170を超えた中性的な顔立ちの彼はやけに目立っていたものの、誰もそれが日野萌だと気付く人はおらず、めぐちゃん自身も気づかれるまでは言わないつもりだと言っていた。

「梶君と同じクラスだって! やったじゃん綾瀬」

そう言われ、私は大きく頷く。

「浅井君や井上君も一緒だよ!それに淳君や猿渡さんも……!」

言葉には出さなかったけれど、木山淳の1つ上にはしっかりと「木山薫」という名前が掲載されていた。

馴染みのある生徒はみんな同じクラスになれたのだ。

手を取り合って喜んでいる私たちに梶君が声をかけてきた。

「風野―、何飛び跳ねてんだ、っていうかそっちの人って……」

梶君はめぐちゃんの顔を覗きこんで一瞬「ん?」と首を傾げた。

「日野恵一君、だよ」
私が紹介をすると、梶君が「え!?」と大声を上げて飛び退く。

彼は暫くめぐちゃんの姿をまじまじと眺めていたものの、やがてムリな笑顔を作った。

「女の時は違和感あったけど、男だと結構カッコいいな、日野」
そう言われためぐちゃんは一瞬だけ笑顔を引きつらせたものの、低い声で「どーも」と言った。

他の人たちと会わずに私たちは教室へと入った。

梶君と私は出席番号順で前後の列となり、淳君は昨年と同じように私の前の席になった。そしてその前の席が木山君。
梶君の隣りの席がめぐちゃんだ。

「みんな文系だったなんて知らなかった」

めぐちゃんが笑顔で言うと、淳君が引きつった表情のまま「俺もだよ」と答える。

彼の前に座っている木山君は机に突っ伏して狸寝入りをしている。
私たちには関わりたくないというオーラが全面に表れていた。

昨年同じクラスだった女子がチラホラといて、恵一君に何とも言えない視線を注いでいたものの、猿渡さんは面白がってめぐちゃんに積極的に声をかけていた。



始業式が終わると、早速HRでプリントが配られる。

「今年は修学旅行がありますが、4月に遠足もあります。行き先はお隣りの県の森林公園でバーベキューをします」

バーベキューという言葉に一部の生徒たちが歓声を上げたものの、屋上メンバーはいつも以上にシラッとしたテンションだった。

「クラスの親睦を深める為に、グループは私が決めさせて頂きます」

次の担任の言葉にはクラス全体からブーイングが起こる。

「出席番号順だったら、俺と風野は高確率で同じグループだな」

背後に座っていた梶君からそっと声をかけられ、私は笑顔で頷いた。

もし梶君と私の間で切られても、私は淳君と同じグループになれるわけで、知らない人ばかりの中でオドオドするという可能性はないのだ。

少しだけ安心しつつも、アウトドアの経験なんてない私はそれ程楽しみな行事でもなかった。