冬休みの宿題を年内に終わらせることができた。

紅白歌合戦をボーッと見ていると、父親がリビングへとやって来た。

「綾瀬、明日は初詣に行くのか?」

カレンダーを見ながら訊ねられ、私は「うん」と答える。

内心では「そこに書いてあるでしょ」と思っていたけれど、怖いので口には出さないようにした。

「男と一緒にか?」

そう言われ、私は父親を振り返る。

「男子もいるし、女の子も一緒だよ」

父親は苦い顔のままジッと私を見ていた。

「付き合う相手はちゃんと選べよ。
万が一のことがあったら大学への推薦が貰えないかもしれない」

そう堅い声で言われ、ウンザリしながらも「はいはい」と答えておいた。

台所から年越し蕎麦を運んで来た母が父を軽く睨みながら「過保護ねぇ」と呟いた。

「前に綾瀬が学校休んだ時に来てくれた男の子、なかなか良かったじゃない」

母に耳打ちをされ、私は久し振りにあの時のことを思い出した。

木山君が謝りに来てくれた時、そう言えば母はやけに上機嫌だった。

どうやら彼は母のお眼鏡にかなうような人物だったらしい。

「木山君は彼氏じゃないよ」

私が言うと、母は「そうなの?」と驚いたように言った。

「ただの友達…クラスも違うし」

好きな歌手が出てきたのでテレビの音量を上げながら、私はそう答えた。

今年もあと数時間で終わる。

そう思うとなんだかしみじみとしてしまった。

たくさんの人と出会い、たくさんの経験をし、たくさんの幸せをもらった。そんな1年だった。

いつか大人になった時、私は人生の転機を「高校1年生の時」と言うだろう。

めまぐるしい成長を思い出しながら、私はホッと一息ついた。




翌朝。

7時に起きてリビングへ行くと、母が雑煮の支度をしていた。

「あけましておめでとう」

私がボソッと呟きながら椅子に座ると、「新年の挨拶くらいちゃんとしなさいよ」と小言を言ってきた。

すでに起きていた父は新聞の特別号を読みながら、「お年玉、そこに置いておいたぞ」とテーブルの隅を指さす。

――それこそちゃんと渡せよ。

そう思いながらも「ありがとう」と口先だけで言い、私はぽち袋を手元に寄せた。