また授業をサボったクラスメートの為に、図書室でルーズリーフのコピーを取らせてもらった。

「木山ー」

屋上の扉を開けて呼びかけると、フェンスに凭れてイチゴオレを飲んでいた木山は「ん?」と首を傾げる。

――授業をサボって1時間此所で優雅にジュースすすってたってか…。

相変わらずのマイペースさにウンザリしながらも、俺はコピーを木山に渡す。

「お前、もう少し留年への危機感持った方が良いんじゃね」

俺が言うと、木山は何故か照れたように笑いながら頬を掻く。

「大丈夫だって、俺はやればできる奴だから」

「いや、でもお前何もやってないだろ」

ツッコミを入れながら木山の足もとに腰を下ろす。

視界に映る木山の手は相変わらずタコが幾つもできていて、一向に納まる気配はない。

ここ数日でできたものまであるのを見ると、まだ吐き癖は治っていないらしかった。

――そう言えば、あいつもそうだったな。

そう思い出していた時だった。

「梶の中学で自殺した人って、どんな奴だったの」

ストレートに聞かれた。

呆れながら見上げると、木山は俺を見下ろしてニッと笑う。

「もうお前とそっくりだったよ。
木下香って言うんだけど、お前に会った時は木下の再来だと直感的に思いました。
もう出会いから死亡フラグ」

俺が言うと、木山は「名前まで!?」と驚いたように言った。

「あと、手、な」

そう言い、俺は木山の手を握る。

最近はパッと振り払うようなことはしなくなったけれど、あまりベタベタ触られるのはまだ慣れていないらしい。

「すっげー吐きダコできてたの。手の甲に。
最初は虫さされか怪我かと思ってたんだけど、後になって知った」

木山は握られた手を見下ろしながら苦笑いを浮かべる。

「歯が当たるとね、できるんだよ」

「知ってるよ、それくらい」

俺は言い返しながら、ゴツゴツした手の甲を軽く触った。

相変わらずのひんやりとした手と、伸びっぱなしの爪。

「お前いい加減爪切れよ」

俺が言うと、木山は「梶は細かいなー」と相変わらず茶化したように言った。