綿菓子と唐辛子



…昔から夕暮れ時の教室は好きだ。

誰もいないところで、静かに過ごすのが風情があっていい。

そんな気がしていた。


「…ヒメ、なんで…」


そんな中にいるヒメ。オレンジ色の光が、彼女に吸い込まれるように、照らしていて。


…それにしても、どうして、こんなところにいるのだろう。


「……ごめん。うちに呼び出されても、ナツは来てくれないんじゃないかって…思ったんだ」


「…は………」


トコトコと、黒板の前を通って入り口に近づいてくる。

そんなヒメに俺は、一歩だけ後ずさりをしてしまった。怖いわけでもなかったのに、なんとなく、そうしてしまった。


「…ナツ、ごめん、聞いて」


そんな俺の袖をつかんで、ヒメは、くいっと引っ張った。

少しだけ伸びる制服。

そこに添えられている手が小さくて、可愛くて。びっくりするくらい。