ケーキが、落ちそうになった。

泣いているヒメの重さに、耐えられないくらい腕がふるえた。

ヒメは、どうしてそんなに俺を見てくれるの。


胸が、おさまらない。熱い。くるしい。


「…っ、」



バタン、と、ドアをしめた。

ヒメを抱えたまま、俺の部屋に入れた。


ふるえるヒメはそのままで、俺はケーキを安全なところにおいて、自由になった腕はヒメを抱きしめる。

…こんなに、小さかったっけ。



「…ばかヒメ。俺は佐々木さんにも南にもキョーミないよ」


誰を、一番に見てると思ってんだ。


「…俺は、ヒメが可愛いのに………」



他の誰でもない、ヒメが。


「…ナツ…」

「…もしかしてヤキモチやいてんの?」

「…!」

「……うれしい」



怒ってた理由は、それだったのか。

ただ、不機嫌になってただけなのか。

…でも、いいや。
ヒメにとって、俺はそれだけ大事な人になってきてたってことだよな。