アパートに帰る裏道には、おいしそうなケーキ屋さんがあった。
昔からあるケーキ屋さんで、最近は若い夫婦が受け継いだとかで若者受けするケーキがよく売っている。
外に宣伝として出ているケーキを見ると、男から見ても可愛いケーキが並んでいた。
バラに見立てたおしゃれなケーキとか、動物の形をしたケーキとか。
とにかくたくさんだ。
その中に、パンダのケーキがあった。
黒ゴマ風味のムースが入った農耕ケーキ…。おいしいのか、これ。
でも、なんとなく、ヒメに似てる。
目、くるくるしてるところとか、特に。
「あの、すみません…」
「はぁーい!いらっしゃいませー!」
「この、パンダのケーキ、ひとつお願いします」
…すべては、ヒメの笑顔が見たいから。
俺はそのためになら、なんだってするよ。
ま、このケーキは、パンダがヒメに似ていたからだけど。



