だんだんと、近づいてくるふたり。

人の間を縫って走る姿を、ヒメとただ見ていた。



「み、南ちゃん………?」

「…と、勇哉だね」

「…っ」


ヒメ!と、南のソプラノが聞こえた瞬間、たまらなくなったのか、俺の横を通り過ぎて、南の元へ走って行くヒメ。

やれやれと、残された荷物を持って、俺も3人を目指して歩いた。




「…ヒメ………っ」


「みなみ、ちゃ…」



南は、飛び込んで行ったヒメを受け止めて、ぎゅっと抱きしめていた。


…きっと、南も、泣くほど心配をしていてくれたんだろう。



「ヒメのばか…!突然いなくなったりして、心配したんだからね…!!」

「南ちゃん、ごめんね…ごめんね…」



涙をぽろぽろと零しながら抱き合う二人を、俺は勇哉と見ていた。


「…おかえり、ナツ」

「…おう」

「…南、ずっと泣いてたんだ。しばらくはあぁさせてやってよ」

「…ん」


二人は、ヒメがなぜいなくなったのかは知らない。

だから、きっとこれからヒメが話すのだろう。

俺からは、何も言わないほうがいい、きっと。

…ヒメが話したとしても、勇哉も南も、きっと真剣に聞いてくれるはずだから。