・・・
「おら、ここが料理部の部室だよ」
「……」
——放課後。
俺は、ヒメを連れて部活に行った。場所は言わずもがな、学校の家庭科室。
3日前に入学式があってから、1年生が数名入部し、仮入部の子たちもたくさん来ている。
3年生がいないうちの部活では、部長の俺と副部長、そして5人の女たちで構成されている。
「こんちわー」
「あー!部長、やっと来たんですね!もう待ちくたびれてますよ。みんな」
「おー、わりーな」
出迎えたのは、副部長の環(たまき)。
みんな、もうエプロンをつけた状態で、スタンバイして待っていた。
俺も、部室に置いていたエプロンを装着し、たまたま部室に置いていたものをヒメに貸す。
「とりあえず隣に移動すっか。冷蔵庫の中、何が入ってる?」
「はい!えーっと、トマトにバジルにモッツァレラチーズ…、あとはベーコンとブロッコリー、パスタくらいです」
「お!モッツァレラチーズあんのか。了解了解。明日買い出しの日だからよろしく」
「「はい!!」」
モッツァレラチーズにトマトにバジル…。
んー…なに作るかなー…。
「…ナツ」
「ん?」
ヒメが、俺のエプロンをツンッと引っ張った。
昼間と同じように、眉間にシワを寄せている。何かを考え込んでいる顔だ。
「…」
つーか、改めてこうやってみると、コイツ…実は小さいんだな。なかなか近くに立ったことがなかったから、気づかなかった。



