綿菓子と唐辛子



本郷は、最後まで何ともないようにポツポツと言葉を紡いでいた。

もう、昔の話だからと、割り切って話しているのだろうか。

その心情は、よく分からないけれど、よくここの2年間で、そこまで消費できたなとも、思うんだ。

…俺なら、もっと…………。



「ま、そういうわけで、俺は別にあいつとはもう何ともない。あぁいう約束をしてたから、姫芽が帰ってくるって聞いて、助けてやってただけ」

「…」

「姫芽の母親も、今日は一緒に出かけてるし」


色々と心配かけてごめん。
…最後に本郷は、俺に向けて頭を下げた。



「プールの時も、ごめん。俺を見て、まだ目を逸らしてしまう姫芽を見て、もしかしたらまだ男が無理なんじゃないかって思って、『付き合わないほうがいい』って言ったんだよね」

「…」

「…それから、プールの時にも姫芽に言っていた、腕の傷…。あれは、監禁中に犯人からつけられた痕だ」

「…!」

「手錠で繋がれていたらしい。その時の傷が、まだ数年経った今でも、残っている」


「…」

「…知っているような口聞いてしまった。悪かった」

「…」



…そうだったのか…。


ヒメの、あの腕にある傷は、その事件で負ったもの…。




生々しい傷を思い出すと、思わず悔しくて、キュッと口元に力が入った。






「でも、この間の電話の時で分かったわ。必死でアンタにこのことを知られないようにしている姿見て…、あぁ、本当にアンタのこと好きなんだなって」

「…」


だって、自分の過去が知られたくなかったら、嫌だよね、普通に。

そう、笑いながら話す本郷は、少し、泣きそうな顔をしていた。