綿菓子と唐辛子






相坂姫芽が戻ってきて、初めて電話をくれたのは、高校1年の終わりだった。


…まさかだった。

それまで、一度も連絡してこなかった姫芽が、突然、俺の携帯に電話をかけてきた。



「…はい、もしもし」



正直、嬉しさとか、そういうのはなかった。

何の用だろう、と、それだけで。



…俺は、きっと、必死に忘れようと努力したんだなと、その時に感じたくらいで。




『…コウタロウ…?』

「…うん」




だから、いつも通りに話せた。

あんなに、目の前で叫んでいたのに、この日は驚くほど落ち着いていて。

少し、声も大人びていた。




『…久しぶり。あのね、報告があって電話したの。聞いてくれる?』

「…うん」



久しぶりの声。

その声で、何度も俺の名前を呼んでくれた。




『…わたし、高校2年生から、東京に引っ越すの』

「…うん……」

『驚いた…?』

「うん、まあ」



そっか、と、少し、電話の向こうで笑っていた。