この先も、このきれいなお姫様は、俺のものだと思った。
「…俺も、すげー好きだよ、姫芽」
この、くちびるも、息遣いも、全部全部、俺のものだって。
「…コウタロウ、こんなとこでキスはダメだよ…」
「なんで…?」
「みんなに、見られちゃうよ」
「…誰も見てないよ、ショーに集中してる」
「…ッ」
ずっとずっと、こんな幸せが続けばいいと思っていた。
姫芽のすべては、俺が知っていればいい。
俺が、知っていけばいい。
「…っは、あ、電話…………」
「…」
会場の一番後ろ。
誰も見ていないことをいいことに、キスに夢中になっていた俺らは、姫芽の携帯が鳴っていることに、しばらく気づいていなかったらしい。
「ごめん、ちょっと話してくる…!コウタロウはショーを見てて…!」
「………」
携帯には、【お母さん】と表示されていた。
「いや、ちょっと待てって。俺も行くし」
暗いから、心配なんだけど。
「大丈夫!すぐ戻るから!」
「………」
そう言って、姫芽は、俺の前から、姿を消した。



