「でもさ、姫芽。ナイトショーだから、帰るの遅くなってしまうよ。それは、お母さんが許さないんじゃないの」
「んー……」
姫芽の家は、母子家庭だった。お父さんは、早くに離婚して家を出たとか。
お母さんは身体が弱くて、喘息を患っていた。
時々、発作がひどくて、入院してしまうこともあったらしい。
「…ちょっと、相談してみる」
「うん。それがいいよ。まぁ、行くなら俺がちゃんと責任もって見送るから、大丈夫だよって伝えて」
「…うん、ありがとうコウタロウ」
姫芽は、いつも儚げな笑顔で笑う。
サラサラの長い髪は、その顔をいつもさらに華やかに浮かび上がらせた。
儚かった。例えるなら、甘い甘いお菓子のような。
だから俺は、姫芽のことを宝物を守るように、こわれないように、大切にしていた。
誰の手にも、わたらないように。
誰の手にも、汚されないように。
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