「…は、早く助け…。腕に乳酸が溜まって腕がカチカチに…ッ」

「は?!乳酸菌がなんて?!」

「乳酸菌じゃなくて乳酸…って、そんなんどうでもいいから早く助けろクソ男!」

「はーー?!」


杉村先生!
先生は騙されている!!

こいつは優しくなんかない。やっぱりただの偉ぶったはんにゃ女だ。

助けて欲しいのに「クソ男」はないだろ。口が悪いにもほどがある。女の子にここまでボロクソに言われたのは初めてだぞ、俺は。


つーかジャージでこんな木に登って降りられないって、何やってんだコイツ。



「…あのさー、何やってんの?」


俺は、ブルブルと震えている相坂姫芽に手を貸しながら聞いた。本当だ、もう腕がコチコチに固まっている。どのくらいの時間、こうしてたんだ、コイツは。


「う、うるさいっ!猫が…猫が降りられなくなってて…、それを助けてたら…こんなことに…」

「あ?」


…猫?

子どもを助けた次は、猫?


「は、離すなよっ!っていうか、どう降りればいいのか分からな…」

「はいはい。もう面倒だから飛びなよ。ちゃんと受け止めるから」


…猫、助けようとしてたのか。本当だ、腕にはまだ子どもだと思われる茶色の猫がぶら下がっている。


「…」


コイツ、普通に優しいじゃん。木に登れないくせに、普通助けようとするかよ。先生たち呼んでくるとか、やり方は他にもあったはずなのに。

もしかして助けることが仕事なわけ?
そんなわけないか。


「う、受け止める…って…」

「いーから」



本当、何やってんだよ。