「…っ」
一瞬、ヒメの体が止まった。
時間が停止したように。動かなくなった。視線は、まるで一点を見つめたように固まって。
身体の横で握りしめられた手は、震えていた。
「…わたし…………」
助けてあげたい。
でも、聞きたい。
聞かなきゃ、この間のつらさはきっと、なくならない。でも、彼女が少し無理をしているのに気づいてしまって、こわくなった。
「…ヒメ、」
無理しないで、と、言ってあげようとした時。
ヒメの小さいくちびるは動いた。
「…ま、前に付き合っていた人にねっ、あの……無理やりっていうか…あの…、そ、そーいうこと、されそうになったことあって」
…そして、少し無理やり、彼女から語られて。
「……………え…」
「…うん、だから、なんとなくね、男恐怖症っていうか」
「…………」
男恐怖症……?



