「…ナツ、わたしね、」
「…うん」
「ナツがいなくなってから、悲しくて、あのパンダのケーキ、食べながらずっと泣いてたの」
「…」
パンダのケーキ…。
ヒメっぽいと思って、ヒメに食べさせてあげたくて買っていったものだ。
ヒメに拒絶されて、そのまま押しつけるようにして帰ってきた。
泣いていたんだ。あの時。
「…南ちゃんにも、電話した。悲しくて。どうすればいいのか分からなくなって」
「…ん」
俺は、しばらくヒメの言葉に耳を傾けることにした。
淡々と、出てくる言葉たちを拾い上げながら。
「…そしたらね、怒られた。ナツのこと、好きなのにどうして傷つけるのって」
「…」
「…でもね、うち、ナツと付き合えないのには、理由があったの」
…俺と、付き合えない、理由……。
俺がこの間、拒まれた理由だ。
「…ナツ、うち……わたしね、」
「…」
ヒメの、理由。



