明日から第二体育館が使えなくなる。
そう思うとこれが最後なわけでもないのに私の足は第二体育館へ向かっていた。
工事が終わればまた使える。
でも、工事が終わる頃にはもう先輩はここにはいない。
天井に挟まってたバレーボールもきっと外されているだろう。
照明も、新しいのに取り替えられているかもしれない。
やだなぁ、と膝を抱えて体育館の外の壁に寄りかかる。
変わってゆくのはしょうがない。
でも、思い出をもつ物が消えてゆくのが嫌だ。
"立ち入り禁止"
そうかかれているプラカードを飛び越えて中に入ってみる。
どうせ人はいないだろうし。
半ばヤケクソな気持ちだった。
「立ち入り禁止だよ、そこ。」
後方からの声に注意された。
もう最近のイライラが溜まっていて、なんでもいいから発散したかった私は後ろを向いて思いっきり注意した相手を睨みつけた。
女の子だった。
金髪で、青い目の。
これだけだとまさに外国人だが、顔は日本人そのものだ。
べちゃっとした鼻に、切れ長な目。
総合的に言うと、かなりバランスの悪い子だった。
こんな子うちの学校にいたっけか、と私はなんとも失礼なことを考えてしまった。
だってこんな金髪なんて絶対目立つはず。
しかも、青い目。
噂でも聞いたことがない。
だが、制服を着ているのだから同じ学校なのだろう。
「あ、君、見たことある。」
「誰ですか?」
「ボクのことはいいよ別に。それよりも君、あれだよね、昼休み、あのかっこいい先輩のこといつもこの体育館の階段から見てたでしょ。」
目を細くさせて彼女はケラケラと笑う。
私は思わず顔を顰めた。
女の子なのにボクという一人称を使っていることに違和感を覚えたし、なによりもなんで私が昼休みに先輩を見ていたことを知っているのか。
昼休みここは先輩と私以外は二、三人しか利用する人はいない。
その中に彼女は絶対いなかった。
居たら絶対覚えているはずだ。
この子は外見がとてもインパクトが強いから。
「いつもこの体育館にいるからね、ボク。」
「見たことありません。」
「嘘だーっ。絶対ボクのこと見たことあるって。」


