「お前さ、ぜんっぜん俺のタイプじゃなかったんだよ。笑わないしけっこう嫉妬深いしつまんねーし。」

「先輩の股間蹴ってもいいですか?」

「おい待て早まるな。最後まで聞け。お前と付き合うことにしたのにはちゃんとした理由がある。」

ぎゅ、と先輩は抱きしめる力を強めた。
今まで非常に健全なお付き合いをしてきた私と先輩にとって、抱きしめることも抱きしめられることも初めての経験だった。

「まぁ、毎日自分のこと見つめてくる後輩がいるってことは、素直に嬉しかったしな。」

そうだ。
私が先輩を好きになって、そうなったら自然と目で追うようになっていたんだ。
何がきっかけで好きになったんだっけか。

「どーせすぐ終わっちまうんだろーな、って思ってたのに、意外と続いて。しかももっと意外なことに、嫌じゃなかったんだよな。」

お前の嫉妬深さとか、生真面目さとか。

夢じゃないかと思った。
回り回って、この先輩は偽物なんじゃないかとさえ思った。
でも、肩口に顔を埋めるといつもの先輩のふんわりとした匂いがした。