勉強なんてきっと必要ない。



たまたまアルバイト先のファーストフード店には、高校中退でフリーターの1コ上の子がいたし……。



フリーターになれば同じ年齢でも時給は上がる。



学生なんて肩書きが、これからの私にとって役に立つとは思えなかった。



高校を卒業したって、何がやりたい訳でもないんだから。



欲しいのはケンの手だけ……。



「必ず迎えに行く」



辛いときはこの言葉を思い出せば大丈夫。



ケンの顔を、手を、腕の強さを、ぬくもりを、写真を、言葉を、一つ一つ思い出しながら私は地元の求人誌を捲っていた。



幼い私はまだ気がついていない。



じわじわと「寂しさ」という名の悪魔が私を取り巻いていた事。



そして



世の中には……甘い魅惑が溢れていると言う事。