私の名前は桜木葵。



桜木リュウジの妻である。



私は今日も、こうして生きて年を重ねている。



愛情に包まれた穏やかな……時間の中で。







今では転職を経て、とある会社の主任を務めるリュウジが言った。



「会社の若い子に聞いたらさ、今ケータイ小説が流行ってるんだって」



「そうなの?」



「うん、葵も書いてみれば?」



それは、ほんの些細な一言。



だけど、その言葉を聞いた瞬間、濁流のように流れ出す物語。



自分では止められないぐらいに、すらすらと湧いて出るたくさんの文字達。