ビルの中に目を移すと変わらないままの、赤く焼けた古いエレベーター。



外の看板がついていたから……本当は今扉を開けてみたら、変わらない川口がいるもかもしれない。



だけど……それは出来ない。



そんな勇気は無いよ。



だって、もし……アツシがいたら、笑えないから。



あんなに、何度も断わったのに、好きだって言ってくれたアツシ。



本当に嬉しかった。



束縛やDVは良くない事。分かってるけど寂しがりやな私はそれでも愛情が欲しかった。



もし、アナタが嘘つきじゃなかったら、ひょっとしたらまだ一緒にいたかもしれない。なんて思うと不思議だね。



裏切られて一人だった私に、家族をくれたアツシ。



たくさんの嘘にまみれてはいたけれど、アツシの言ってくれる「好き」って言葉に嘘は無かったって分かってるから。



こんな私に家族を、愛をくれてありがとう。



嘘で固めなくても、素のままで十分素敵だよ。



私じゃなくてもそう思う人、きっとたくさんいるから……そんな相手と巡り合えますように。