あやと葵が完全に交錯してしまった私は、仕事を辞めるとますますその世界に入り込んでしまう。



あやが手にしているのはカッターナイフ。



もう、自分の体を人に見せる必要はない。人前で脱いだりなんかしないんだから。



それまでは針で刺していただけの傷跡が、日々、どんどんと深く抉られる。



深く傷を付けた左腕から流れる血を止めようとも思わない。そのまま乱暴にタオルをぐるぐると巻きつけると、傷はそのまま放置する。



栄養不足で貧血気味な体はすぐに眠りに就き、目が覚めた葵は驚愕する。



「リュウジ……また、切っちゃったみたい」



「消毒はちゃんとしなよ。苦しくても切っちゃダメ。何にも変わらないでしょ?」



リュウジの言っている事、半分は理解出来るのに……気がついたら自傷行為を繰り返してしまっている自分が恨めしい。



自分を落ち着かせるように、繰り返す自傷行為を止めることが出来ない。



さすがのリュウジも思い余って、時々厳しい言葉を降らす。



「そんなに切りたいんだったら勝手に切れば?」



苛立つリュウジのその言葉が愛から来るものだなんて気づかずに、その後も止められないまま深い傷が増えていった。