その日、私は学校近くのコーヒーショップへ徳井先輩を呼び出した。
いつもケンを連れ出してばかりの先輩に言うつもり。
自分の気持ち。
そして、少しだけ一緒にいる時間を作って欲しい……そんな小さなお願いをしよう。
別に先輩に告白するわけでも無いのに……待っている間味覚は麻痺し、コーヒーの味も分からない。
顔馴染みのお姉さんも今日は忙しそうで、とても構ってくれそうにないし。
-ウィーン-
「よぉ!」
自動ドアが開いて、いつもの様にギターを背負った先輩が手を上げた。
「なんか急にゴメンナサイ」
これから話す事を思って強張る体を無理に伸ばすと、先輩の為に隣の席を空ける。
「葵だけなんて珍しいな」
そう、いつもこの店に来るときはケンや将が一緒だった。
どこに合わせたらいいのか分からない視点を無理やり先輩に向けて
「相談があるんです!」
こんな事は初めてで、コーヒーカップを持つ手が震えていて……そんな事実で自分がどれだけケンの事を好きなのか再確認してしまった。



