女には絶対に手を出さない。



そう言っていたアツシの言葉は、こんな時に皮肉にも嘘へと変わる。



そこにはもう、あの日の優しい腕枕をくれた人はいない。



どんな仕事をしていても、優しく愛してくれていた人もいない。



嫌いになってしまえば……楽になれるのに。



「ごめんっ、葵。俺どうかしてた」



すぐに謝るその姿に……私もアツシの頭を撫でてしまう。



「いいよ……私も悪かった」



暴力の後に、何事も無かったように優しくなるのがDVの特徴だなんてこと……私はもちろん知る由もなかった。